Column

コラム

  • ホーム
  • コラム
  • 清酒の「日本酒度」を中心とした成分値と甘・辛の関係についてのお話
2023.11.29

清酒の「日本酒度」を中心とした成分値と甘・辛の関係についてのお話

清酒の甘・辛が話題になると先ず出てくるのが「日本酒度」です。やれ日本酒度がプラスだから辛いとかマイナスだから甘い云々となります。
分析値を知ってから味わうとどうしても香味に対する先入観が出来やすく酒質を数値で評価しがちになってきます。そこで今日は「日本酒度」を中心とした清酒の分析値の意味合いと味わいの関係についてお話してみます。

1,「日本酒度」とは

清酒の商品ラベル、酒販店、飲食店等で見たり聞いたりする清酒用語の一つに「日本酒度」があります。清酒の味わいを数値化したもので、清酒中に含まれる主に糖分の量を表しています。日本酒度プラス5とかマイナス2などプラス、マイナスの数値で表記されています。

2,清酒の甘さや辛さの目安となるのが「日本酒度」

日本酒度の測定には「日本酒度計」とよぶウキ(浮秤・ふひょう)を用い測定します。清酒中の糖分がアルコールより重いという質量の違いを利用した専用の比重計です。

測定方法は清酒をガラス製シリンダーに入れ清酒品温を15度に調整し、その中に日本酒度計を浮かべ、清酒の液面との境目の目盛りを測定します。

糖分を多く含んだ甘口タイプの清酒は水より重いため日本酒度計は浮かびマイナス側の数値が大きくなり、逆に糖分の少ない辛口タイプの清酒は水より軽いため沈みプラス側の数値が大きくなります。

このように日本酒度計の浮き沈みは清酒中の糖分の量(比重)で変わるため、これを測定し甘・辛の判断の目安とします。

日本酒度の計測

※ 日本酒度の計測(15℃ モロミ濾液又は清酒)

日本酒度測定の本来の目的は酒造りの工程の中で発酵度合いを見極め発酵管管理に使用するものです。発酵途中のモロミをサンプルとして採取しロ過したロ液を日本酒度計で測定し、管理の指標として発酵温度等を誘導します。

分析用モロミ濾液の採取

※分析用モロミ濾液の採取

3,清酒の甘・辛は「日本酒度」だけで表せる?

日本酒度の数値と実際に舌で感じる甘・辛が必ずしも一致するわけではありません。日本酒度では辛口タイプに分類されても飲んだ方の多くが甘いと感じる清酒もあるのです。

清酒の飲み口である甘・辛は日本酒度(糖分)以外にも清酒中に含まれる酸度やアミノ酸度、更には香り等が味わいに微妙に影響しますし、食事を伴う場合は食べ物により味わいが違ってくる場合があることから、あくまでも日本酒度は甘・辛の目安、参考程度に止め、先ず、きき酒により香味のバランスを判断することが重要です。

清酒を味わった際の印象と(きき酒感想)と分析値が同方向であれば「酒がわかる!」とついニヤリ、嬉しくなるでしょうし、逆の感想となれば何故、どうしてだろう?と追及したくなるでしょう。このように味わいに興味を持っていただければ味の深みや楽しみも増える事でしょう。

4,清酒中の「酸度」、「アミノ酸度」

清酒は発酵段階で様々な有機酸やアミノ酸が生成されます。
「酸度」は有機酸と呼ばれる乳酸、コハク酸、クエン酸等を酸度として表し文字通り酸味の程度を示します。
「アミノ酸度」は清酒に含まれているアミノ酸の総量を数値したもので旨味成分として知られているグルタミン酸の他全部で20種類程あります。
アミノ酸はお酒らしい甘さやコクを感じることに関係しますがアミノ酸が高すぎると苦味やクドさを感じたりして飲み飽きしてしまう場合もあります。

酸度の計測

※酸度の計測

5,日本酒度と酸度の関係

清酒の成分で糖分と酸度のバランスが甘・辛の判断には重要となります。この酸度の働きで同じ糖分量の清酒であれば甘さを打ち消す酸度の多い方が辛く感じるのが一般的です。例えば大吟醸酒タイプの清酒は酸度が少ないことが一般的で、日本酒度がプラスの数値が大きく辛口タイプに分類されるようであっても飲み口としてはそれほど辛くは感じず香気成分も作用し甘味さえ感じる場合があります。

6,きき酒の手順

  • 1. 猪口の色とサエ(濁度)
  • 2. 猪口からの上立香
  • 3. 口中香及び味

①~③を一連の動作で行い、口に含み異香味の有無、香味の特徴及び味のバランスを総合的に判断します。

蛇の目猪口

※蛇の目猪口

蛇の目猪口

※蛇の目猪口
白地:着色の度合いを見る
蛇の目:青の輪の部分で冴え(濁り)を見る

唎酒用アンバーグラス

※唎酒用アンバーグラス
琥珀色のグラスで着色の要素を取り除く