Column

コラム

2024.01.14

日本酒の作り方②麹について

②麹について

清酒造りには、「酵母(こうぼ)」「麹(こうじ)」「酵素(こうそ)」・・と難し
い言葉がたくさんあります。酵母のお話しにも少し触れ、今回は麹と酵素を中
心にお話しします。

*麹とは

清酒醸造において麹を簡単に説明すると「米麹とは蒸したお米に麹カビが増殖したもの」と言うことができます。よくスーパーで売っているお米に綿のような白い毛(麹カビ)がついているのが麹で、清酒や焼酎、味噌・醤油のほか、甘酒、みりん、酢、漬物を造るのになくてはならないものです。

そして、その麹の働きは、麹菌が造るビタミンなどの栄養成分のほか、

1:麹の持つお米のデンプンを糖分(甘味)に変える

2:お米のタンパク質をアミノ酸(うま味)に変える

3:お米を溶かす

などの働きがあります。これらの成分を変える働きをするのが麹の持っている酵素というタンパク質からなる物質なのです。

※米糀(こめこうじ)

*麹(こうじ)と酵母(こうぼ)の役割

簡単に言うと、酵母という微生物は、主に糖分を食べてアルコールや炭酸ガスのほか、香り、酸味、うま味成分を造ります。ワインの醸造の場合は、搾ったブドウ果汁に糖分があるので酵母だけでアルコールを造ることができますが、清酒の場合は、お米には糖分がほとんどないので、お米のデンプンを麹の酵素の力で糖分に変えてから、酵母でアルコールを造ります。麹カビと酵母菌の両微生物が連携するから、おいしい清酒ができるのです。

太古から湿気の多いアジア大陸から伝わった麹を活用して、穀類から清酒を含めた発酵食品を造る技術を開発・継承・進化して現在の食文化を構築した先人達には感謝しかありません。

※酵母菌(こうぼきん)

※麹菌(こうじきん)

*麹の種類

麹カビが米に生えたら「米麹」、麦に生えたら「麦麹」、大豆に生えたら「豆麹」になり、それぞれの発酵食品に使用されます。また、麹カビにも種類があって、清酒にはアスペルギルス オリゼーという黄麹菌が使われるほか、焼酎には白麹菌や黒麹菌など、発酵食品によって使う麹カビも異なってきます。清酒醸造では、黄麹カビの種(種麹、もやし、胞子・・とも言います)を購入し麹造りをします。

近年、麹菌の研究により、デンプンから高い効率で糖分(ブドウ糖)を生成する種麹菌も開発され、清酒の甘味の多様性が広がってきました。

※種麹(たねこうじ)

*米麹の造り方

清酒醸造では、麹を自動で造る機械もありますが、一般的には「麹室(こうじむろ)」という特別な部屋で麹を造ります。麹室は、約35℃の温度と湿度が安定した状態に保たれるていて、約40時間から50時間かけて麹が造られます。

まず、「引込み」工程で、蒸した米を麹室に入れます。床(とこ)と呼ばれるテーブルに広げて蒸米を目標の温度と水分にした後、「種付け」といって麹カビの種を蒸米にふりかけます。「床もみ」操作でよく混ぜた後、「包み上げ」といって種付けした蒸米をまとめて布で包み、麹カビの増殖を待ちます。

通常、「包み上げ」10時間後に、内部の温度上昇と表面の乾燥防止、酸素の供給を目的として蒸米を崩してかたまりをほぐし、再度包み上げる「切返し」操作を行います。

「包み上げ」約20時間後に、かたまりをほぐして広げる「盛り(もり)」という操作を行います。

それ以降も、過度な麹菌の増殖を防ぐために温度の管理や、水分の逸散、酸素の供給を目的として、「仲仕事(なかしごと)」や「仕舞仕事(しまいしごと)」という工程で、蒸米をかき混ぜたり広げたりして温度調整し、麹カビの増殖を調整しながら約40時間から50時間かけて麹が出来あがります。

※麹室(こうじむろ)

*一麹二酛三造り(いちこうじ にもと さんつくり)

麹造りは、清酒醸造にとって最も重要な工程といわれています。いかに雑菌を防ぎながら麹カビだけを増殖させ、さらに、目標とする量の酵素を生産させなければいけません。十分な酵素を造らなければ、ややもすれば、糖分が少なかったり、お米が溶けなくて目標とするアルコールや香りを造ることができなくなります。一方、麹菌が増殖しすぎると、お酒の味が多すぎて雑味のある清酒になってしまいます。

35℃という過酷な麹室で、夜間作業も含めた麹造りの苦労があるからこそ、美味しいお酒ができるのです。

爛漫「環稲 一穂積」と「環稲 百田」