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コラム

2023.10.23

清酒の保存方法のお話

よく「清酒には賞味期限はありますか?」とか、「清酒は開封してからどのくらいもちますか?」などの質問をいただきます。

ウイスキーやブランデーや焼酎などの蒸留酒は年単位の長い貯蔵期間の中で香味がまろやかになり、ボディ感が増しおいしくなっていきます。醸造酒ではワインもそうです。それらに比べ、清酒の場合は、月単位、週単位、もしくは日々香りと味が変化していきます。

今回は、清酒を購入してから、「いかに清酒をおいしい状態で飲めるか?」を目安に保存方法を中心にお話しします。

1. 清酒には賞味期限はありませんが・・

ほとんどの飲食物には、賞味期限や消費期限の表示が義務化されていますが、清酒には賞味期限がありません。その一つには、アルコール度数が約16%と比較的高いため、菌が増殖しにくいのが理由です。しかし、アルコールに強い乳酸菌(火落菌)もいて、清酒の中で増殖すると白濁し、香りや味の変化がする場合があります。体には影響ありませんが注意が必要です。商品に書いてある年月日は、賞味期限ではなく製造年月なので間違えないようにしましょう。
蔵元では、お客様が商品を購入し、栓を開けるタイミングに合わせおいしい酒質になるよう出荷に努力しています。

爛漫の市販酒の製造年月のアップの写真

※製造年月

2. 清酒の熟成・劣化とは?

清酒は、時間の経過と共に、①温度(気温、室温)、②光(紫外線や蛍光灯)、③酸化(酸素)が主な要因で日々酒質が変化していきます。言うまでもありませんが、搾りたてが一番フレッシュで若い酒質ですが、貯蔵を通して適度に熟成し、適熟という飲み頃の時期をむかえます。それを過ぎると過熟になり、色が濃くなり、老香(ひねか)といわれる熟成香が発生し、味わい深くなります。
市販酒の過度な熟成を進めないためには、できるだけ低温で、日光や蛍光灯を避け、開封後はなるべく空気にふれないように(脱気する道具もあります)ビンを縦置きで保存するのが望ましいと思います。
開封前に比べて開封後の清酒は空気にふれることによって酒質の変化が早くなります。開封後は特に注意しましょう。

爛漫のビン貯蔵の倉庫の写真

※蔵内のビン貯蔵酒

3. 火入酒と生酒の保存方法

一般的な清酒は、「火入酒」といい、搾ってから貯蔵前とビン詰め前の2回の殺菌(火入れ)を行っていて微生物の殺菌と酵素の失活で比較的熟成が進みにくい酒質です。それに比べ「生酒」は殺菌なし又は1回の殺菌で比較的熟成が進みやすい酒質です。生酒には、

① 1回も殺菌していない「生酒、本生、生生」

② 貯蔵前の殺菌はしないで生で貯蔵してビン詰め前に殺菌する「生貯蔵酒」

③ 貯蔵前に殺菌してビン詰め前に殺菌しない「生詰酒」の3種類があります。

①②③の順に熟成が進み、特に1回も殺菌していない「生酒、本生、生生」は生きている清酒なので、できる限り低温で貯蔵して、購入してからまたは開封してから早くお飲みすることをおすすめします。

当社のフルーティな香りとフレッシュな味を特徴とする一部商品には、パストライザーという殺菌機を使って急速ビン殺菌をしています。

爛漫の生酒の商品写真

※爛漫の生酒

爛漫のパストライザーの写真

※急速ビン殺菌機パストライザー

4. 理想の保存方法とは?

いろいろなお酒の本には、清酒を購入してから、「〇度で貯蔵して、〇日以内ならおいしく飲めますよ!」と書いていますが、蔵元では商品ごとの熟成のベストなタイミングで出荷していますので、火入酒・生酒などの種類にとらわれず、購入・開封したら直ちに冷蔵庫(約5℃)の低温で遮光条件で保存し、できるだけ早くお飲みすることをおすすめします。「冷蔵庫には、お酒でいっぱいで・・」という愛飲家の方には低温保存に適したセラーもおすすめです。それでも入らないという場合は、普通酒や本醸造酒は部屋のなるべく冷暗所に置きましょう。
また、「そんなに早くすぐには飲めないよ・・」という方は、参考までにおいしく飲める期間は、純米大吟醸酒、純米吟醸酒、大吟醸酒、吟醸酒は開封前では製造日から最長で約半年間、開封後であれば約2週間ほどです。普通酒や本醸造酒は比較的変化がゆるやかで、開封前では最長で約1年間、開封後であれば約1か月間です。生酒においては、熟成・劣化のスピードが速いため1週間以内に飲み干すようにしましょう。

冷蔵庫に入っている商品の写真

※購入・開封後は冷蔵庫へ

5. おいしく飲む温度

清酒の種類によっておいしく飲むためのちょうどよい品温があります。お米をたくさん削って造った純米大吟醸酒、純米吟醸酒、大吟醸酒、吟醸酒などは、果物のようなフルーティな香りと適度な甘さと後味の綺麗さが特徴です。おいしく飲むためには熱燗よりは、花冷え(10℃前後)から常温(20℃前後)が最適な品温です。また、普通酒や本醸造酒(純米酒も?)などは日向燗(30℃前後)、ぬる燗(40℃前後)、あつ燗(50℃前後)でもおいしく飲むことができます。生酒は、フレッシュな搾りたてのような風味を楽しむために雪冷え(5℃前後)から花冷え(10℃前後)の温度がおいしくいただけます。

6. 熟成酒というカテゴリー

冬季に造った清酒を1年間かけて販売するのが一般的ですが、任意団体の長期熟成酒研究会では、「満3年以上蔵元で熟成させた糖類添加酒を除く清酒」を熟成古酒と定義しました。「熟成酒、長期熟成酒、秘蔵酒」などの商品として販売しています。色も濃く、老酒に似た風味を持ち濃醇な酒質です。清酒の熟成・過熟はマイナス面ばかりでなく、色々な変化を楽しむことができます。

まとめ

愛飲家の皆様には、フルーティでフレッシュな清酒の好きな方、まろやかに適度に熟成した清酒の好きな方、味わい深い熟成酒の好きな方、人それぞれ好みがあります。飲む温度の好みも人それぞれです。飲む人が一番おいしいと感じれば幸せなことで、清酒はまさに嗜好品です。本コラムの「清酒の保存方法」の基本をおさえて清酒を楽しんでください。