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2024.04.17

【秋田の日本酒】大吟醸酒造りについて『其の三』~オリ引きから出品まで~

目次

1. オリ引き

2. 火入れ

3. 貯蔵

4. 出品

蔵人が総力を挙げて醸した精米歩合40%自社田米「百田」の大吟醸酒がようやく搾り終えました。でも安心してはいけません。これからも大事な工程が残っています。生酒は酒質の変化が大きく、また、火入酒も貯蔵温度によって微妙に熟成していきます。出品酒なら審査の日に、また、市販酒ならお客様が購入するときに品質と熟度を最高の状態にしなければいけません。

今回は、出品酒を中心にオリ引きから出品までの苦労の裏側をお話しします。

1. オリ引き(斗ビンから一升瓶へ)

 袋吊り法で搾った清酒には、お米の溶け残りや酵母などを含んだ微細なオリが混ざっています。斗ビンの中でオリを沈ませ、清澄な部分だけを分離することを「オリ引き」といいます。 

当社では、大吟醸の一仕込みから斗ビンを4本取り、酒質が変化しないように-8℃で3日間置きオリを沈降させます。サイホンを使いオリが入らないように、斗ビンから一升ビン約10本の清澄した清酒をとります。香りが飛散しないように、空気による酸化が進まないように注意しながら慎重に行います。

総米600kg(醪は約1700L)の仕込みからわずかに斗ビン4本(約80L)の貴重な大吟醸酒です。令和6年度のコンテスト用に大事に使っていきます。

2. 火入れ(ビン火入れ)

火入れの目的は、酵素の失活と微生物の殺菌です。火入れ前の生酒には、活性酵素とわずかな酵母菌などの微生物が存在しているため酒質の変化が早く、早く酵素の失活と微生物の殺菌をしなければいけません。

通常、火入れ殺菌は、蛇管やプレート式の熱交換機で行いますが、出品酒やこだわり商品では「ビン火入れ」を行います。具体的には、一升ビンに入っているお酒の品温を62℃以上にして酵素の失活と微生物の殺菌を行います。酒質面を考慮すると、温度を早く上げて、急冷するのが望ましいのですが、ビンの破損やビン内のお酒の温度が不均一にならないように温度計で確認しながら徐々に品温を上げていきます。昔は、香りの飛散や変化などを考慮して低めの温度で火入れを行いましたが、現在は十分に酵素を失活させるため65℃近くまで上げます。大事なポイントは、ビンの中でも上下で約10℃の温度差があるので、攪拌して均一にしてから目標の品温になったかを確かめます。

火入れが終わったら、急冷をしますが、60℃以上のビンを急に氷水に漬けると間違いなく破損してしまいます。ビンと冷水の温度差が30℃以上にならないように、ぬるま湯→水→氷と慎重に段階的に冷やしていきます。

3. 貯蔵

無事に火入れ殺菌された「百田」の大吟醸酒は、しばし低温での眠り(貯蔵)につきます。-8℃なので寒くて眠れませんが・・・・、火入酒でもわずかですが時間の経過と共に搾りたてのキリットした酒質がゆっくりとまろやかな酒質になっていきます。

一年間の主なコンテストは、3月に秋田県清酒鑑評会と山形県新酒鑑評会、そして4月には全国新酒鑑評会の審査があります。また、夏を越した9月には秋田県清酒品評会と東北清酒鑑評会があります。これらのコンテストに向けて熟成程度を確認しながらベストな酒質になるように貯蔵していきます。

4. 出品

3月と4月の新酒のコンテストは、搾りたての華やかな香りと、お米の旨味と新酒の軽快な味、そして後味のキレの良さが求められます。一升ビンは、ゆっくり休む間もなく-8℃の冷蔵庫から出され、春の出品の準備にかかります。斗ビンごとの一升ビンのお酒をきき酒して、クセがないか? 熟成度は? コンテストの目的にあった酒質か? などを確認しながら出品する酒を決めていきます。出品酒は、通常500mlビンが多く、斗ビンから一升ビンへのオリ引きと同じように、一升ビンから500mlのビンにオリ引きをしながら分注し、期限に間に合うように発送します。

一升ビンや500mlビンごとにばらつきがでないようにビンは十分な洗浄を行い、また、出品から審査の日までの熟成の進み具合などを想定し、審査で良い評価を得ることを期待しながら出品酒を送り出します。