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コラム

2025.05.20

【秋田の日本酒】自社田栽培が始まりました 其の一

~ 苗づくり ~

目次

1. 爛漫の酒米作り

2. 種もみの準備

3. 播種(はしゅ)・育苗(いくびょう)

秋田県湯沢市ではようやく桜の季節になり、蔵では仕込みも終わり、上槽を待つ醪が数本のみとなりました。この時期になると弊社の農業生産課の社員が蔵から田んぼに移動を始めます。

弊社では、安定した酒米確保を目的として、2020年に農業生産課を立ち上げ、2021年春から自社田米として栽培を始めました。

本コラムでは、弊社社員による苗作りから田植え、稲刈りまでを数回にわたりお届けします。

1. 爛漫の酒米作り

美酒爛漫のある秋田県湯沢市は、最盛期には県内で生産される酒米の約8割が収穫されていた「酒米の里」です。弊社では、2021年から湯沢市近隣の農地を借り、「秋田酒こまち」、「一穂積」、「百田」の3種類の酒米を作付面積12.5ヘクタールで、自社で使う酒米のうち約2割を栽培しています。社員が自ら納得する酒米を作り、それを原料にして高品質な日本酒を醸しているのです。

2.種もみの準備

良質な種もみを確保するためには、「選種→消毒→浸種→催芽(さいが)※芽出し」の工程があります。

・選種(せんしゅ):一般的には塩水選という方法で、栄養源の胚乳の多い良質な種もみを 選抜します。具体的には、70リットルの水に塩13.5gの比重1.13の塩水を作り、その中に種もみを入れ、栄養の少ない軽いものを取り除きます。

・消毒:病原菌によるジベレリンを防ぐ目的で、種もみを消毒します。薬剤を使う方法も

ありますが、弊社では60℃、10分の温湯消毒を行います。

・浸種(しんしゅ):種もみに水を吸わせて発芽の準備を行います。大事な点は、浸種の積算温度(平均水温×日数=100)が重要になります。今年の湯沢市は低温傾向で積算温度100に苦労しています。

浸種
積算温度100℃が目標

・催芽(さいが)※芽出し:浸種の終わった種もみを30~32℃のぬるま湯に15~20時間浸して、発芽を始める状態にします。幼芽と幼根が少し生えた「はと胸状態」がベストです。その後、冷水につけて催芽を抑え、脱水後、乾燥させ播種に備えます。

催芽(さいが)
ハト胸状態
乾燥

3. 播種(はしゅ)

・育苗箱に床土を入れ、種もみをパラパラと種まきし、覆土(ふくど)することを播種といいます。田植えまでの間、子を育てるように大事に稲の苗を育てる工程です。弊社では、平たい育苗箱を使い、床土に水、種もみ、土をかけて、約2700枚の「マット苗」を作り、ビニールハウスの中で目出しのため被覆資材を使用し、約27日間、種もみを育てていきます。

 また、新たな試みとして試験的に約150枚を露路プール育苗も行い、東北北部でも温暖化により対応可能かを検討しています。

床土の準備
ビニールハウスの準備
灌水(かんすい)※床土に水をかけます
種もみをまきます
覆土(ふくど)※土をかけます
ビニールハウス

弊社では、酒造りだけではなく、農業生産課の社員を中心に、蔵人や新入社員、全員で酒米作りに取り組んでいます。

次回は田植えのようすをお伝えします。

>>【秋田の日本酒】自社田栽培が始まりました 其の二