目次
1. 田んぼの準備
2. 田植え作業
3. 田植え後の田んぼの管理
4.早苗饗(さなぶり)
毎年、5月10日頃になると美酒爛漫のある秋田県湯沢市の田んぼにも水が入り始めます。大事に育てた苗も立派に育ち、残雪の鳥海山を背景にいよいよ田植えの時期です。
弊社では、安定した酒米確保を目的として、2020年に農業生産課を立ち上げ、2021年春から自社田米として栽培を始めました。酒米の品種は、「秋田酒こまち」、「一穂積(いちほづみ)」、「百田(ひゃくでん)」の三種類。今年は12.5ヘクタールの田んぼに社員自らの手で田植えを行いました。
田んぼに水が入り、田植えをする前に田んぼを準備する必要があります。田植えまでの流れとしては、1回目田起こし(荒起こし)→畦塗り(あぜぬり)→春耕起(2回目田起こし)→入水→代掻き(しろかき)→田植え の順番に行います。
・田起こし:前年の稲刈り後に1回目の田起こしを行い、土の酸素や栄養分の環境を整えます。弊社では、未製品で廃棄される乾燥麹や酒粕粉末も一部の圃場に散布して、循環型の米作りを行っています。
・畦塗り(あぜぬり):田んぼの水が漏れないように田んぼの畦(あぜ)に泥土を塗ります。
・代掻き(しろかき):田んぼに水が入った後、水分を含んだ土を攪拌して、田植えに向けて表面を平らにします。
田んぼの準備が整ったら、いよいよ田んぼへの苗の植え付けです。天候を見ながら、田植え機を使い、苗と苗の間隔や、植え付けの深さなどに気を付けながら植えていきます。
弊社では、農業生産課の社員を中心に職場の協力を得て、田んぼの場所を変えながら代掻きと同時進行で、一日7人体制で約2週間かけて安全第一で作業を進めていきます。肥料は、田植え時に側条施肥で行い、雑草対策として全圃場を代掻きから中2日開けて田植えというサイクルですすめています。本年度も、事故も無く、秋田酒こまち9ha、一穂積2ha、百田1.5haを無事に植えることができました。
田植え後の管理として、適切な水管理で初期の活着を進め、その後、浅水管理で地温を高め、分けつの促進に努めていきます。
秋田県では、田植えが終わると、「早苗饗(さなぶり)」という行事が行われます。これは、田の神様に田植えの無事を感謝し、豊作を祈るための宴です。「早苗」は植えたばかりの稲の苗、「饗」はもてなしを意味し、自然と人とのつながりを感じる日本の美しい風習のひとつです。
地域によっては神棚にお供えをしたり、家族や仲間と食卓を囲み、労をねぎらい合う時間を持ちます。秋田でも、こうした風習が今も息づいており、季節の節目に感謝を捧げる心が大切にされています。
田植えを終えた田んぼには、初夏の風に揺れる苗の姿があります。秋田銘醸では、「秋田酒こまち」「百田」「一穂積」の三品種を自社田で大切に育てています。どの苗も、これからの陽ざしと雨を受けて、すくすくと育ってくれることを願うばかりです。
自然の恵みと人の手が重なり合って、やがて実る稲穂。その一粒一粒が、私たちの酒づくりの原点です。今年もまた、皆さまに喜んでいただける酒をお届けできるよう、心を込めて歩んでまいります。